同じ方向を見る時間
ライブハウスでは、知らない人どうしが一つの暗い部屋に集まり、同じ方向を見ている。音が始まる前には待つ時間があり、始まれば身体の動きや声が少しずつ揃っていく。
そこには、日常から切り離された時間を共同で作るという意味で、祭祀に似たところがあるのではないかと思う。
記録に残らないもの
演奏は録音できる。照明も映像として残せる。それでも、その場の温度や床の振動、隣にいた知らない人の息づかいまで同じ形では保存できない。
だからこそ人は、終わったあとに言葉で話し直す。何が起きたのかを説明するというより、失われた時間の輪郭を何度もなぞっているのかもしれない。
小さな祭りのあと
外へ出ると、街は何事もなかったように続いている。さっきまで同じ部屋にいた人たちは別々の方向へ歩いていく。その短い共同体が解ける瞬間まで含めて、ライブという出来事なのだと思う。